左官一服噺 材料○海藻糊(seaweed paste)97
海藻糊は混和用の糊の一種で角叉や布海苔等海に棲息するもので作った糊の総称でし。春あるいは秋に採取し、1年程度乾燥したもので、根や茎などが混入せず、煮たのちに粘性のある液状となり、不溶解分が25%以下のものとしています。
左官の下地となる壁は、ヨーロッパ・中国と日本と大きな違いある。ヨーロッパ・中国の壁は耐力壁であり、その材料はレンガや石が用いられています。石やレンガが下地であれば、左官工事で様々な要因となる保水性を高めるための水打ちが可能です。
しかし、日本では小舞下地が一般であったため、土を塗り上げていくために、その下地に水打ちすることが難しくなります。よって、我が国では、塗り材の方に工夫をして、保水効果を付加させます。
古来より日本壁の特徴として漆喰・土物壁に粘性・保水性を与えることが必要とされており、乾燥後の結合と固結を計るためにも糊材、特に角又糊を混入してきました。
糊を壁材に混練りすることで保水効果を持たせるのは日本独特のもので、欧米では一時期、動物の膠質のものを石膏に混入することによって、遅延硬化剤の役目を果たしてきました。
現在では角又糊を粉体にしたものが使用されていますが、江戸期から粉体の角又糊が一般になるまでの昭和30年代までは、角又(銀杏草)を2年以上乾燥させた品を弱火にもって煮炊きし溶かし、それを篩にて滓を取り払って漆喰に混入していました。
漆喰を始めとして、我が国の左官材料ほど、糊や苆とする混和材料にこだわるものは、世界でも無いように思えます。それほど、我が国左官材料は、繊細であると思います。
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