費用負担が少ない土蔵の改修

kentのこだわり「土蔵の土壁が落ちてきて、直しておきたい。」との連絡があり、早速に調査・診断に行きました。土蔵は、昭和の初めに建てられた、中塗りの状態のものでした。長年穀物を貯蔵し、風雨に耐えてきた様子がよくわかります。お客様は、「なるべく費用を軽くするもので、あと10年ほどもってくれれば。しかし、セメントモルタルで仕上げだけは困る。」と複雑な注文でした。幸い、中塗りの土は大きな、剥離・剥落が見られませんでした。基礎石の30㎝上の腰巻部分が、劣化の対象とされるものでした。当方の提案としては、土蔵の中塗り土の耐久性を付加させ、役物を含め再度、美しさを回復することを工事概要としました。

土蔵改修工事前の外観

土蔵改修工事前の外観:土蔵の壁面に劣化がみられます。特に腰周りの部分の腰巻きとい箇所に、土がぷかぷかした状態が見られます。

土蔵改修工事後の外観

土蔵改修工事後の外観:ローコストで仕上げられた改修工事後の土蔵の外観です。ローコストでも土壁の耐久性を高めてあり、今後もこの家のシンボルとして佇まいことでしょう。

土蔵改修工事後の外観

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土蔵壁面の清掃

土蔵壁面の清掃

土蔵の壁面は、土でできています。そのためコ、表面の清掃では、コンクリートのように高圧水洗浄で洗い流すことができません。そこで、ワイヤブラシ等を使用して、表面を掻き落とすようにして、新しい壁面を出しています。

土壁の脆弱部の撤去

土壁の脆弱部の撤去

土蔵の腰部の上にある水切りが蛇腹状態になっています。その上部が特にぼろぼろになっています。どうしても水が入り込む所は、土壁の劣化が激しくなります。その状態のまま、新しい土を塗りと、すぐ剥がれてしまいます。丁寧に劣化部部分をはがします。

腰巻の劣化部分の撤去

腰巻の劣化部分の撤去

腰巻は、三和土で固められています。長年の雨で三和土にある砂利が洗い出し仕上げのように表面に見られます。表層の剥がれる部分を撤去します。

吸水調整材の塗布

吸水調整材の塗布

土壁の全体に5倍に薄めた吸水調整材というポリマーディパージョンを塗布します。最初のポリマーディパージョンが乾燥したら、また塗布してこれを3から5回繰り返します。この作業によって土壁の表面は強度が、じょじょに回復してきます。土蔵の改修工事では、土壁の表面強度があるかないか、劣化の状態が小舞まですすんでいるかで、工事費用が大きく影響します。

土壁の表層に強度が発現するようになったら、壁面のひび割れ部の砂漆喰でひび割れ部を補修します。砂漆喰は、ポリマーディパージョンを混入して、地震の動きに追随し、雨水を侵入しないように弾性形にします。また、コンクリートやモルタルの補修のように、強度のあるエポキシ樹脂などは使用できません。

砂漆喰工法

砂漆喰で剝落部分を補修します。砂漆喰は、主に関東地方で、上塗り漆喰の下地調整に使用されていました。中塗り土が関西に比べて劣ることで砂漆喰工法が使用されたといいます。土壁+砂漆喰+漆喰仕上げは、経験上からも相性がいいと思います。

プラスターガン

破風および妻飾りは吹付け仕上げです。コスト削減が大きな理由です。ここでの吹付けは、現在一般的なアクリル系の合成樹脂を使用していません。昭和戦後から昭和30年代まで使用されていた、セメントガンをあえて選択しました。アクリル系と漆喰では、素材の違いで、仕上げトーンが異なってきます。漆喰とセメントガンは同じ無機質で仕上げ状態がとても類似しています。久しぶりのセメントガンで気持ちが高ぶりました。

漆喰仕上げ

上塗り工手は、まず砂漆喰で下塗りをします。その際にはガラス補強ネットを挿入します。弊社では、外壁のモルタル仕上げにも、全面にガラス補強ネットを挿入しています。砂漆喰が固まったら、吸水調整材を塗布して、ポリマーディパージョン混入の漆喰を下付けして追っかけ上付けして、鏝で仕上げいています。ポリマーディパージョンを混入することで、雨水の透水を防ぎ、かび等が防げます。材料・工法にこだわりもつことで、極力経費節約して費用負担が少ない土蔵の改修が可能となりました。