左官一服噺  地域○小杉左官2( Kosugi Plaster 2)96

東岩瀬港の佐藤家の土蔵部分      佐藤の紋章をデザインしたもので「カネ佐」とされている。周辺がアカンサスでその下部には 『梅と鶯』が見られ和洋を取り入れた現代でも通用する、斬新な意匠である。

東岩瀬港の佐藤家の土蔵部分           佐藤の紋章をデザインしたもので「カネ佐」とされている。周辺がアカンサスでその下部には
『梅と鶯』が見られ和洋を取り入れた現代でも通用する、斬新な意匠である。

雪の多い小杉地方では、日本各地で見られる土蔵の腰に海鼠壁があまりみられないのも特徴のひとつであります。吸水率の高い瓦を張る工法が、凍結融解等で耐久性が悪くなることが原因のひとつと考えられます。むしろ、明治以降の土蔵の腰部分は洗出し仕上げが多く見られ、海鼠壁として用いられる部分は、機能性というより、意匠と見栄の方に力が注がれています。

 また、この地域で見られる海鼠壁の特等は、海鼠を白漆喰で磨き、瓦地は瓦を使用せず黒漆喰の磨きで仕上げられています。特に海岸近くで、雪や風雨が吹き付ける地方の土蔵の隅、腰、庇の上部等の劣化が著しくなります。瓦を土壁に張り付けることでなく、黒漆喰仕上げに、白漆喰で海鼠状にして仕上げたもの海鼠壁は、地域性として、日本海側の北前船の集積地ある鳥取県・島根県の海岸沿いや富山県富山市東岩瀬町にもみられます。

外壁仕上げは、土壁が劣化することをふまえ、取替えが容易な羽目板状の下見板張りとなっています。江戸期の土蔵で、この地方の民家は、藩政期に倹約令によって、白漆喰仕上げが禁止され、中塗りまでの土壁仕舞いになっています。雪に閉ざされた時期が長いこの地方では、下屋庇と呼ばれる土庇が多く、そこで作業や移動したりできる工夫がされています。土蔵は冬場の使用を考えて出入口を開放的にするのではなく、完全に取り囲む閉鎖的空間『戸前』が配置されています。そこには、左官の技の鏝絵が施されているものが多く、この地域の一大特徴とされます。ここでいう『戸前』とは、2階建ての土蔵の平側または、妻側正面の出入口側に、全幅で下げ屋や状に取りつけたもので、『空間』とする意味合いが強いものです。

この地における戸前の装飾は施主の要望によるもので、戸前には黒漆喰の海鼠壁、鏝絵、家紋等の華麗で技と手間(地元では暇という)を他家と競うものであります。これらを面々と伝えてきた事実は、この地の質の高い施主と職人がいたことによります。

杉並の左官です。塗り替え、リフォームお待ちしています。電話03-3398-4335    http://s-kent.jp/contact/

 

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