関東大震災後の建築様式 その2アール・デコ(装飾美術)

アール・デコ(装飾美術)建築様式

 バラック建築を巧みな方法で意匠を試してきた建築家たちは、その後の本建築では「アール・デコ」を主体とする折衷主義とインターナショナル・スタイルによる建築表現が見られるようになる。アール・デコは1925年に開催されたパリ万国装飾美術博覧会で花開き、「アール・デコ博」・「一九二五年様式」と呼ばれている。世界的に1920年代は、華麗な様式が主流を占めいていたことにもよる。

 アール・デコに似た用語でアール・ヌーボーという用語がある。アール・ヌーボーは植物などを思わせる曲線を多用した有機的なデザインである。自動車・飛行機や各種の工業製品、近代的都市生活が生まれた時代に伴い、進歩した文明の象徴である機械を思わせる。装飾を排除した機能的・実用的なフォルムが、新時代の美意識として様式化したものである。

一方、アール・デコは、幾何学的な図形を基調としながら、さらに、職人の手わざがそこに反映されている。特色を観ると

  • 対称性
  • 直線的

がある。

アール・ヌーボーが植物を思わせ、非対称の曲線から成り立っていたのと比較すると明確なように、装飾を目指しながらも、アール・デコは可能な限り自身を幾何学的な図像の範囲に収め、対称性、直線造形を用いて20世紀の工業生産と折り合っていく。

直線造形の伊勢丹新宿本店
伊勢丹新宿本店は、改修を何回か行ったが、アール・デコ様式の繊細で直線的なデザインは変更しなかった。
1階御影石張り 上階タイル張り

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その後、アール・デコは、近代主義にある装飾排除の経過によって「最後の装飾芸術」と呼ばれるようになる。このように、アール・デコは、近代的な規格化された形態を重視するモダニズムに合わないことから、アール・デコ様式の流行が去ると過去の悪趣味な装飾と捉えられた。しかし、左官装飾で有名な湘南台文化センターや長八美術館等にみられるポスト・モダニズムの流れの中では、再評価されていた。

                                                          続く

 

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