左官一服噺 材料○石膏の性質3(せっこう)(gypsum)85
大正12年の関東震災後復興を契機として、海外から各種の建築材料が輸入の石膏プラスター」、廃型利用の「サンエスプラスター」、天然石膏を使用した「大宝石膏プラスター」が、昭和初年(1926)から昭和10(1935)年の間に製造されていました。これらのプラスターは、いずれも、生石灰から作った石灰クリームと混合して使用するものでありました。
日華事変とともに、石膏プラスターの製造は少なくなり、遂に休止するに至り、戦後の石膏プラスターの出現を待ちます。関東大震災で防火性能が建築界で謳われ、石膏プラスターの防火性能で、大きな需要になるかと思われましたが、あまり使用されませんでした。これも、葛生のドロマイトプラスターの開発が大きく影響していると考えられます。
石膏の防火性能
元来、左官材料は土でも、漆喰でも防火的効果は備えています。特に石膏プラスターはその効果に優れており、内装で防火構造とする場合には、石膏ボード下地に石膏プラスターが最も優れた仕様であります。
焼き石膏が水和してできた二水石膏は、結合水で約20%前後の水を抱えています。プラスターや石膏ボードの壁、天井が防火性に優れている理由は、この結合水が火災の際に蒸発し、バリアとなって火から建物を守ることになります。
凝結時間
石膏プラスターは以下の状況で凝結時間は促進されます。
①.混練りする水が清水でない場合、特に鏝や道具を洗った石膏を含んだ水を使用したとき。
②.日向水など温度が上がった水を使用したとき。このさいには強度は落ちる。
③.古い石膏プラスターが混入したとき。
④.塩分を含んだ砂を用いたとき
⑤.消石灰、セメント等の微量なアルカリ質が混入したとき。
養生
石膏プラスターの急激な乾燥は、塗り面の硬化不良、上塗り面のひび割れを生じさせます。プラスターの凝結・硬化の時期を考慮した通風が必要です。塗り作業中および作業後半日から1日程度は、通風をなくし,塗り層中の水分を確保してプラスター中の二水石膏の結晶化させます。
このため塗り作業前に窓には建具が入っていることが、必要とされます。特に寒中工事では、その必要があります。塗り付け後は、直射日光、激しい風あたりを避け、おだやかな通風を行います。また、含水状態では硬化した石膏の強度低くなります。そのため、乾燥が困難な場所ならびに乾湿の繰返しを受ける部位では、硬化不良となり,耐久性のない壁面になるおそれがあります。
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