左官一服噺 建物○大沢家の土蔵(おおさわけのどぞう) Dozo of Osawa house 54
川越市にある大沢家の土蔵は、特に左官の技を見せるものであります。この土蔵は、蔵造りの街並みにあります。
大沢家の土蔵で、沿道に面した窓格子は、一見して木のように見えますが、実は、木軸に棕櫚縄を巻き、漆喰を塗り、それを木のように見せるように仕上げたものです。そして、川越の見世蔵の大きな特徴とするところの、外壁を黒磨き仕上げにしてあります。黒磨き仕上げが白漆喰仕上げに比べて手間がかかることは、我々左官職人が充分知り得ることであります。
商人たちは、武士階級の建物が白の漆喰仕上げであったことへの遠慮がありました。それより、江戸を中心とする商人たちが、それをあえて好んで用いたのは、士農工商の封建制度の中で最も低いとされている商人たちが、財にものをいわせ着物の裏地に高価な布地を使ったと同様の発想でした。江戸時代の度重なる贅沢禁止令に対して、武士に対するせめてもの反抗を示すもので、商人たちの反骨精神でもありました。
そしてそれは明治になっても受け継がれ、大火事のあと煉瓦造りを選ばなかったように、薩長の藩閥政府の欧化主義への抵抗でもあったのかもしれません。
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