左官一服噺  材料○土佐漆喰(Tosa Shikkui finish)91

梱包された土佐漆喰

梱包された土佐漆喰

土佐漆喰とは、漆喰の一種で、土佐(高知)地方で生産・使用されてきた漆喰です。一般の漆喰のように糊材を混入しないところに特徴があります。江戸時代より土佐では、石灰岩を採掘し、消石灰にしてきました。

高知県特有の漆喰で、南国市稲生は良質の石灰を産し、製造方法も独特のものです。県南部の風雨の激しい地域で最も信頼できる外壁材として使用されてきました。 

土佐漆喰は、塩焼き石灰と呼ばれる石灰岩に工業塩を混入し、焼成した地灰である粒土の大きい消石灰に、発酵させた稲藁苆を、挽き石灰に練り混ぜます。稲藁苆を使用しているため、塗りつけた当初は、黄色になりますが、硬化するに従って白くなっていきます。

練上がった材料であるため、最近まで、搬送手段に限界がありました。ビニール袋というもので、袋詰めされるようになってから、各地で使用されるようになりました。 

一般の漆喰のように糊材混入しないことにで、塗り上がった壁面に普通の漆喰のように、雨水が当たる場合に、糊の戻り現象がないために剥落が起きないため、高知の外壁には信頼性があります。稲藁苆を使用しているため、塗り付けた当初は、黄色でありますが、硬化するにしたがって、次第に漆喰の持つ、肌合いになるとともに色も白くなっていきます。

近年土佐漆喰の機能性が見直され、各地で盛んに使用されていますが、充分に鏝で締固めないと、黴を誘発することがあります。

昭和27年4月号の「建築技術」に中村伸先生による下記のような記述があり今から65年前からの提唱であり、先生の先見性に驚嘆するものがあります。

「ノリを使う普通の漆喰の欠点は水に弱いことである。即ち水に濡れるとノリがもどって剥げ落ちたり、カビの斑を出してくる。土佐漆喰にはそれがない。屋外壁に防火モルタル壁のように使ったものが相当の耐久性を示している。この点はプラスターも同様であるが残念ながら、プラスターは荒壁の上には塗れない。

小舞真壁が全国的には多く、その防火性も認識されていて準耐火造に指定されているが、この真壁の欠点は上塗の漆喰がすぐ落ちてしまうことである。ここに土佐漆喰がその特徴を発揮すべき活躍が剥げある。

木造のセメントモルタル壁が中の軸部を腐らせるため、10年前後が寿命といわれ、そろそろ問題になりかけてきたとこだけに土佐漆喰に期待されるものである。中略 現在、国宝保存で城をはじめ古い建築物の壁の工事も多いと思われるが、そういう工事には是非土佐漆喰を勧めたい。ノリ漆喰の壁なぞ折角の国宝保存が改悪工事になってしまう。そして各塗層間に充分の乾燥時間を設けなければいけない。城や築地を始め壁でもっているような建物の改修に壁の研究もせずに手をつけ、何年事業というオッツケ短期工事で隅から片づけてゆくのは無鉄砲すぎる。城の壁なぞ下塗りから仕上げまでは少なくとも3年から5年はかかっているだろうと思う。若し工事期間が予算のためにどうしても毎年一区毎かたづけなければならないもので左官工事の期間が1~3ヶ月に限られる現在の状態ならば、思いきって白色セメントとかプラスターという現在の材料をつかう方がよい、話が少々脱線したが、国宝保存には土佐漆喰をお奨めする。外壁漆喰には土佐漆喰以外ない」とあります。_

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