左官一服噺 下地○小舞下地(こまいしたじ)2 bamboo lathing 48
小舞を藁縄で編むことを、左官用語で「小舞を掻く」といいます。小舞下地のままの建物は、外から射し込む光の織りなす陰影によって、得も言われぬ雰囲気を室内空間に醸し出します。
壁を塗ることを生業とするのが、われわれ左官職人で、その技術・工法は遠く飛鳥時代から伝承され、大工と並んでその歴史は古いものです。左官の歴史の博士である故山田幸一先生は、「現存する世界で一番古い木造建築は法隆寺であるが、その壁には土壁が塗られ、下地には小舞が使用された。材料は檜材の割肌六分角が用いれ、現在のように竹小舞ではなく木材が使用されていた。」と、しています。
当時の小舞は「古麻比」・「樞」・「櫚」などと書かれ、細長い木材のことをコマイと呼んでいました。現在のように下地の工法を指していたのではなく材料の名前としていたのです。
飛鳥・天平時代に盛んに建設された公共建築、寺社建築の多くは小舞下地に土壁が塗られていました。小舞下地に土壁は、渡来人の影響が多く、進歩的なエリート集団の舶来趣味なものでもありました。
古墳以来、日本の伝統的な壁とする板壁は、まだまだ多く存在しておりこちらの方が一般的でありました。まして、漆喰や白土で白亜に仕上げるということ事態が、時代の最先端をいくことで、それは権威の象徴でもあったのです。
まさに、これは当時、渡来人が中央政府の重要な地位にいたことの証明であり、大陸から朝鮮を経て、小舞下地工法を直接日本に持ち込んだことのあらわれであると推測できます。
壁の材料は、原則的にその地方で採取できるものを使用します。小舞材料は一般に竹が使用されますが、北関東以北は入手の容易な葦を使用しています。寒冷地には真竹が成育していなかったことと、藩政時代の竹の使用制限によるものです。葦は竹より強度が弱いため2~4本に束ねて、藁縄で編み土壁下地としています。
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