左官一服噺 下地○木摺下地.(wood lath)75
木摺下地は日本古来ものではなく明治中期洋風建築の工法として使用されたものです。我が国では、明治期迄、一般的なものではありませんが、数寄屋建築などの特に柱の細い箇所で、この工法が使用されていました。小舞下地では、仕上げ厚をとることができない場合に、木摺下地としていました。
明治中期には、洋風建築の大壁工法の導入によって、木摺下地が一般的工法として使用されるようになりました。
戦前の大壁内壁の塗り構成は、下地が木摺下地で、下塗りから上塗りまで、漆喰やドロマイトプラスターが中心でした。もちろん下塗りには、砂を入れたものを使用します。
戦後は石膏プラスターの導入で、石膏ラスボードの多用で、木摺下地は急速に需要が減少していきます。
木摺下地の工法は、水平とする平打ちで、柱、真柱、野縁等に厚さ7㎜、幅30㎜~40㎜位の小幅な杉材を、壁で約7㎜、天井で約6㎜間隔の目透かしを設けて、釘で留め付けます。
留め付けは、釘が受け材に2本ずつ打込み、受材の芯で継ぎ手とし、ここでも6㎜程度の目透かし継ぎとし,6枚以下ごとに乱継ぎとします。このように、クリアランスを設けることで、地震等の外力に対して、柔軟な動きをみせ、ひび割れを解消します。
木摺下地は、主にドロマイトプラスター塗りの下地としていました。また、明治期の文化財では、大壁の土物壁の下地として使用されていることもあります。
木摺工法には、木摺小幅板を水平に張らず、斜めに張ることがあります。これは、拝み打ち、あるいは嵐打ちともいいます。左右より斜めに、拝むような形に打ち付けることです。小幅板が水平な平打ちより、拜み打ち打ちの方が、筋違の働きすることで、壁の剛性が高まるという考えです。実際実験をすると、1.5倍程度に高まるそうです。昔の大工さん中には、出入口の出隅部分を拝打ちにしたものがあったのを記憶にあります。これもひび割れ防止の処置で、素晴らしい大工さんだと感心しました。
水平打ちができない箇所は、小幅板を縦に張ることもあります。特殊な例で、大壁ではなく真壁での木摺下地は、貫面に縦方向に木摺板を打ち付けます、しかし、壁ちりが少なくなり、塗付け代が充分取れな場合は、真壁小舞下地同様に、貫と貫の間にはめ込むようにして下地を構成します。
木摺り下地は、仕上げ材にひび割れによる剥離が発生しないように、あらかじめ歪みを取り、目違いなく打ち上がり面が平らになるようにしますが、これら木摺り下地工事は、木工事の範囲となります。
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