左官一服噺  テレビ放映○新美の巨人たち3

弊社の鈴木亮佐がテレビに出ました。ことの起こりは、弊社ホームページの「左官一服噺  歴史○擬洋風建築」をみたテレビ局の制作者が見た結果でした。制作会社は「松本にある旧 開智学校の漆喰のコーナーストーンを再現してほしい」・「時間がない。企画・撮影を10日程度で」というものでした。コーナーストーンの制作過程を3回の収録で行うことで決定しました。

石目の中塗り

撮影風景

定木塗り モニターでの写真

中塗り土は、中塗り用の半田土と砂と短めの藁を入れて練り合わせました。本来は、中塗り土を何層に分けて、乾いては塗り、乾いては塗りを繰り返しますが、今回は表層のみの2回塗りです。基本、土の材料は上層に行くほど、砂の量を多くして藁もだんだん短くなります。多くの工程を行うことで、強く、ひび割れが少ない土壁となります。旧開智学校の土壁も、同様に何層に分けて施工したでしょう。

現調したコーナーストーンでの傾斜部を除外した部分の寸法はおおよそ
横幅915㎜×縦幅275㎜×高さ50㎜でした。
これは、立石棟梁の指示が横幅3尺(910㎜)×縦幅9寸(270㎜)×石の厚み分1寸5分(45㎜)であったのかもしれなせん。
指示の寸法より、5㎜程度多いのは、砂漆喰+上塗り漆喰の厚さによるものと思われます。現場では、平場の中塗りが終了した時点で、コーナーストーンの寸法墨出しをしたものと思われます。
ここでは、立石棟梁の指示した横幅3尺(910㎜)×縦幅9寸(270㎜)で墨出しし、左官定木を墨に合わせて立て込みました。そこに中塗り土を塗りこみました。撮影の邪魔になるので、モニターでの写真撮りです。

物のコーナーストーンが自然石で積んだり、張られた状態では、直方体のものを使用しエッジが直角になっているのが一般的です。開智学校では、エッジが傾斜状態で塗られています。その理由として、土は収縮が大きいため、中塗りの下地と、厚く塗り込んだ石状の境界部分では、ひび割れ発生します。これを防ぐためと、長野での雪や雨を傾斜によって侵入を防ぐことが理由と思われます。
コーナーストーンで、なぜあのような寸法と形状したのか?再度考えてみました。まず、寸法は、棟梁の立石が「横幅3尺、縦幅は9寸、高さを1寸5分とせよ」としたといいました。そうなると、左官は中塗り完成後、その寸法に建物下部から墨を追い出したと思います。
の外側に、定木を打ち、定木の立ち上がりから詰め込むように塗りこんだと思います。何層かにして塗り込こんで、固まった後に定木を外します。しかし、その時点で中塗りと石面との境界界面でひび割れが発生することがあります。そこで、仕方なく斜めのエッジ作ったと考えます。
三菱1号館や内閣文庫等で、明治期の建物のセメントモルタルでのコーナーストーンは、エッジが立っています。エッジを傾斜させることで雨や雪の侵入を防げて剥離防止になるかもしれません。また、石と石のつながる細い目地は、当時の左官屋さんが石積みの施工認識が少なかったのかもしれません。藤森先生は、「立石棟梁が東京の西洋建築を見て簡単なスケッチであった。」と述べていました。大工と左官が建築した擬洋風建築の面白さ・楽しさだと思います。

次は上塗りです。

杉並の左官です。塗り替え、リフォームお待ちしています。電話03-3398-4335 http://s-kent.jp/contact/

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