左官一服噺  建物○土蔵の外壁名称(The name of the outer wall of the Dozo)

弊社では、令和になる直前までの株式会社ポールスタアの敷地にある土蔵二棟の改修工事を行いました。土蔵といってもいろいろな構造・用途があります。今回改修したのは、典型的な関東の土蔵です。それでは関東と関西の土蔵の違い外観から比較してみましょう。

正面入り口の蔵戸前は関東が観音扉で関西が引き戸。

窓は関東が観音扉で関西が片扉。

粒・折れ釘は関東には存在するが関西では存在しない。

屋根漆喰は関東では華麗にあるが、関西では多く用いられない。

このように、関東と関西では外観上に違いがあります。その理由は江戸に火事が多かったせいで、防火対策に関東の土蔵がより高くなったのです。

さて、先にあった、戸前と折れ釘とかいろいろ分かりにくい名前がでてきました。土蔵の各部名称を株式会社ポールスタアの土蔵を例にして説明します。

  1. 鬼瓦(おにがわら):装飾瓦の一種で大棟に使用される装飾瓦。「鬼板(おにいた)」ともいう。
  2. 破風(はふ):屋根の妻側に山形に取り付けられた板のこと。その付属物の総称をいう。民家の入母屋屋根の三角形の開口部で「種形」とも呼ぶ。その他「縄破風」、「流れ破風」、「招き破風」、「唐破風」、「あおりすえ」、「千鳥破風」、「障泥破風」、「据破風」、「軒唐破風」などがある。
  3. 置き屋根(おきやね):屋根の一種で、二重屋根のこと。土蔵の屋根を土を塗り、その上に束を建てて、屋根にしたもの。土が雨水に弱いため、それを保護するためにもある。「上げ屋根(あげやね)」、「削屋根(そぎやね)」、置き鞘(おきさや)」、「載せ鞘(のせさや)」ともいう。
  4. 鉢巻(はちまき):土蔵の部分名称。土蔵や箱棟の軒下にあって、軒回りを斜めに張り出し繰り形を引き回したもの。鉢巻きに横縄を張りまわし、下場を起こし、蛇腹の形態を作るもの。
  5. 折れ釘と粒(おれくぎとつぶ):折れた釘のことで、和釘の一種。土蔵に使用される頭部を直角に折り曲げてある釘で物を掛けるのに使用し、折り釘(おりくぎ)」ともいう。粒は土蔵部位の名称の一種で、折れ釘を中心にして、お椀をかぶせたようなもの。折れ釘からの雨水侵入、鉄錆防止の役目をする。関西方面では、あまりみられない。「つぶ皿」、「饅頭(まんじゅう)」、「鏝頭(こてがしら)」ともいう。
  6. 観音扉(かんのんとびら):扉の形式の一種で、一組の開き戸が、左右の戸枠に設けられた蝶番を軸として、中央からそれぞれ逆方向に回転して開閉する。土蔵造りでは扉・枠ともに塗籠とし、扉を閉鎖したときに両者が完全に密閉して、空気を遮断する。扉と扉を合わせる事を『手先』といい、扉を閉鎖した状態で手先を合わせることを『手合わせ』といい、塗りつけに際して、紙一枚を滑り込ませるぐらい精度が必要である。また、土蔵の蔵戸前の観音扉は、非常時以外は開いているため、蔵戸前の裏側の鏡部分に、店の看板として鏝絵などが装飾的施されている。「観音開き」ともいう。
  7. 水切り蛇腹(みずきりじゃばら):雨水を壁面に垂らさないようにしたもの。蛇腹は蛇の腹のような伸縮する形状のもで、由来は、土塀の軒に平瓦を斜めに取り付けた先端部分の形状が蛇の腹に似ていることによる。繰り型のある細長い突出部分をいう。
  8. 土庇(つちひさし):土間の上につくった庇でこの下で簡単な作業をする。「片屋根(かたやね)」ともいう。
  9. 裏白戸(うらじろど):引き土戸の一種で、土蔵の入口にある戸である。防火のために、表側が漆喰塗りにしたもので裏側は板張り片引きの扉となる。この奥に格子付の木製の戸がある。「裏白(うらしろ)」ともいう。
  10. 蔵戸前(くらとまえ):土蔵造りの入口のこと。漆喰塗りで観音開きの開き戸で、掛け子塗りの煙返しがある。左官技術の最高を表わすものの一つ。
  11. 腰巻(こしまき):土蔵の外まわりの下部の、特に厚く土を塗った部分をいう。土壁は水に弱いため、土蔵の腰部分を板葺きにしたり、石張りしたりにすることがある。この腰部分が他の壁より厚くなった部分を「腰巻き」といい、末広がりにすることによって意匠的にも安定感のある土蔵になる。この傾斜をつけることを「根張り(ねばり)」という。
  12. 犬走り(いぬばしり):「犬行」とも書く。建物の周囲および軒下部分にコンクリートや砂利などで固めて作る細長の土間のこと。

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