左官一服噺  建物○土蔵の誕生日(Dozo’s birthday)116

ポールスタアの土蔵

 弊社では、令和になる直前に株式会社ポールスタアの敷地にある土蔵二棟の改修工事を行いました。

 まず、㈱ポールスタアの会社を紹介いたします。東村山展開している会社で設立直後より無添加商品を掲げ合成保存料、合成着色料、うまみ調味料などの添加物を極力加えないオリジナルソース・たれ等の調味料を製造販売している会社です。東村山のご当地グルメ商品として「東村山黒焼きそばソース」を自社開発し、地域の特産品として市販するとともに、業務用として市内の飲食店向けに供給していしています。

 写真にある土蔵は、今まで道具蔵として使用していましたが、向かって左側をソース等の工場直売所で、右側が談話室等に使用するミーティングルームに変更をしています。

「この土蔵がいつ頃建てられたか?」ということが、改修工事ではどうしても、必要な情報です。しかし、オーナーの桜井社長は「よくわからない」との回答でした。このような状況は珍しくありません。大方のオーナー様は「もの心着いたときは、建っていたし、土蔵にはそんな興味がなかった。この年になって大事にしなくては。」とのお答えが返ってきます。

 まずは建設時が不明であるということで工事を進め、工事途中で、土蔵に刻まれた記録を探すことや、土蔵に使用された材料・工法をヒントにして、大まかな時代を探ろうと、工事を開始しました。工事内容に関しては順次発信していきます。

工事があらかた終盤に入るとき、ミーティングルームの内部腰板で土蔵の誕生年が分かるものを発見しました。それが写真にあるものです。

柱に記載された文字

「慶応二年 寅 二月 根太佐入中」と書かれています。これは、「慶応二年 丙寅の2月に床根太を敷き込み中である。」ということです。慶応二年は丙寅(ひのえのとら)年でした。約153年の年月を経て新たにミーティングルームとして船出しました。。

 頭に「〇」が2つ書かれていますが、輪違いで屋号もしくは大工の刻印と思われます。

「慶応二年 (けいおうにねん)」という年ですが、西暦1866年で大政奉還があった前年です。このころ坂本龍馬は薩長同盟を結ばせ活躍していた時期でもあります。もしかしたら龍馬はおりょうさんと新婚旅行をしていた時期かもしれません。

 「寅(とら)二月」で、寒い時期です。外壁の荒壁塗りが終わり、壁ができたことで寒さ除けとなります。2月に大工が内部の造作工事に着手したことを記載しています。このように、墨を使って建物に印すことは、棟梁の権限でもありました。

 「根太佐入中(ねた さしいれちゅう)」で、根太(ねた)は床板を取り付けるものです。根太という具体的な工事名があり、その工事中であることが示されています。

 従来、大工・左官職人は、自分が気に入った建物に携わった証(あかし)として、記念とするものを見つけにくい場所に置くか、銘文を書き残しておきます。今回の銘文は、この柱の部分が物入れに隠れしまうことを見越して記載したものと想像します。

令和元年五月一日 記念すべき令和の最初の日に無事に改修工事も終了しました。二棟の土蔵は、新しく化粧をし直し、たくさんお客様が見学に来て頂きたく皆様をお待ちしています。(ポールスタアの土蔵より)

杉並の左官です。塗り替え、リフォームお待ちしています。電話03-3398-4335    http://s-kent.jp/contact/

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