左官一服噺  歴史○海藻糊材の歴史(かいそうのりざいのれきし)(history of the seaweed glue material) 60

銀杏草:俗に「つのまた」とも呼ばれ仙台物(金華山沖)を最良としています。

銀杏草:俗に「つのまた」とも呼ばれ仙台物(金華山沖)を最良としています。

海藻糊材は左官工事で、主に漆喰に利用されます。最も多く使用されてきたのが、海藻糊で、いつから使用されたのか、その起原は明解でありません。

左官の研究者で多くの業績を残した故山田幸一先生が伝えるのは、『多く使用されてきたのは、土倉、城郭建築の花開く室町・戦国時代頃からであろう』とされ、『それ以前の古代の壁用糊材は「白米」であった』というのが、現在定説になっています。

江戸時代の『和漢三才図会(わかんさんさいずえ)』という書物に、『紅藻(こうそう)を城楼壁(じょうろうかべ)の石灰塗りに用いる。』とあります。これは「海藻を、城の物見やぐらの壁に漆喰仕上げに使用された。」と解釈できます。また、江戸期以前の古文書に『海藻を壁用にする。』と記載されたものは今のところ発見できていません。

しかし、奈良県の左官技術者山田末利氏は、古代漆喰に関して昭和49年に『高松塚古墳壁画漆喰の材質及び工法の研究』、昭和50年に『古代壁研究記録』と題した貴重な論文を書かれています。山田末利氏は様々な下地・材料・工法を独自の方法で実験、検証した結果、『「白米」の糊材は澱粉質で石灰の化学性によって変質し、粘性を失うことを突き止めた。この事実は製糊工業にも知られている。その点、海藻糊は消石灰の強アルカリに耐性を有し、低温でも凝固せず、漆喰用糊としては最良とされ、古墳時代すでに使用されていた可能性が強いと推測される。』と山田幸一先生とは異なる見解を発表しています。同姓の山田の二人が相反する意見であります。山田幸一先生は、文献からの歴史的解明、山田末利氏は左官技術者の立場からの歴史の実証です。現在その結論はでていません。

 

img002-1杉並の左官です。塗り替え、リフォームお待ちしています。電話03-3398-4335    http://s-kent.jp/contact/

 

 

Follow me!