左官一服噺  建物○土壁の家2(つちかべのいえ) Clay walls of the house 56

柱も塗り込んだ「荒壁仕立て」の民家。

柱も塗り込んだ「荒壁仕立て」の民家。

土壁の家に使用される材料は、長期間、水合わせした土であります。この土は、左官職人によって小舞に塗り付けられ、これを「荒壁土」、「粗壁土」、「新泥」、とも著します。荒壁土をよく「荒木田土(あらきだつち)」ともいいますが、荒壁用の土の代表的なもので、東京郊外で、かつて荒木田村から産出したものが土壁用として良好であったため、この地の名前を使っています。

荒壁は、室内側から付ける場合を、小舞の横竹が室内側にあることから「横壁」といいます。それに対し、室外から塗るのを「縦壁(たつかべ)」といいます。

荒壁作業は「土打ち」ともいい、左官親方の采配の元で、村人が材料運びや、土を左官職人の鏝板に差し出す「才取り」作業等に協力します。聞き覚えですが、一日の施工量は、土捏一人、才取り一人、左官職一人、計三人で、50坪を塗り付けたそうです。土の必要量は1坪につき約1荷2分程度(約70㍑)となります。50坪だと約3.5m3と、大変な数量をこなしていました。

荒壁の次の工程は「裏壁塗り」といいます。小舞下地は鉄筋コンクリート造の鉄筋と同様で、土でサンドイッチ状態にした時、初めて壁の強度が発生するため、裏側も塗ることが要求されます。花街の符丁で「裏壁を返す(裏を返す)」とは、二度目の登楼を意味し、三度目を「馴染み」といい、「下地と馴染ませる」というのも、左官の仕事と符丁の合うことであります。

噺はそれますが、客と芸子のその道の言い回しというと、まず「冷やかし」て「見染め」てから、初めての登楼をする「初回」で、先の二度目の登楼を「裏を返す」となります。3回目を「馴染み」となり、そのうち片方から「愛想づかし」となり、とうとう「縁切り」になってします。一般的には、ここで二人の仲は終焉ですが、歌舞伎・落語の世界では「殺し」となってしまいます。

噺を元に戻します。東北地方の農家で仕上がった壁の表情は、町屋の見世蔵の漆喰で施された細工物や、茶室土物仕上げにある縮緬状の繊細な仕上げではありません。そこにあるのは、ひび割れの入った荒壁仕立てや、座敷でも中塗り仕舞いで、円空彫りのように素朴であるが温もりを感じさせます。

荒壁施工の後も、多くの工程を踏み、何層にも塗り重ねられた土壁は、防火性・耐震性に富み、吸放湿性に優れています。セメントや鉄のように製造過程で環境にマイナスの負荷を掛けない優等生が土壁であります。 

img002-1杉並の左官です。塗り替え、リフォームお待ちしています。電話03-3398-4335    http://s-kent.jp/contact/

 

 

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