左官一服噺 材料○石膏(せっこう)gypsuml 39
日本では“石膏”を『せっこう』『石こう』、『石膏』、『石膏』の4種類の書き方があります。これの原因は『膏』の字が非当用漢字のためです。ここでは『石膏』とします。
石膏は石灰と同様に、地下資源として天然の石の形で採掘される。世界中に広く分布しており文明発祥地の中近東から地中海沿岸地域にかけて特に豊富に産出し、原石は柔らかく採掘し易い。ヨーロッパで石膏を「gypsom]と呼ばれ、語源は「cyprus]に発しており、これはキプロス島を表している。この名称になるほどキプロス島では石膏が歴史的に古くから産出するので有名でした。
焼成する温度が石灰の800℃~1200℃ に比べて、それより低温であるために石膏は,数千年前に人類が手にすることができた最初のセメント材料ともいえます。枯草や小枝を燃料として原石を粗割にして積んだり、丘の中腹に小さな横穴を掘って130℃~170℃で3時間ほど下から燃焼させる。これを石臼で粉砕した粉末に水を加えると数十分で硬化する。紀元前2000年には、すでに、焼き石膏は、焼成と水和硬化性が知られていたとされています。
石膏プラスターは二水石膏(CaSO4・2HO2)または天然無水石膏(CaSO4)からつくられる。通常130℃ないし170℃の比較的低温で約3時間程度、原石を仮焼すると石膏中の結晶水の約70%程度が失われ、半水プラスター(CaSO4・1/2H20)と呼ばれる材料になります。もし200℃またはそれ以上の温度で焼けば、石膏から全結晶水が失われ、無水硫酸カルシウム(CaSO4)を形成します。これとほとんど同様の構成をもつ材料は、天然無水石膏と呼ばれるものを、単に粉砕するだけで、焼成しないで得ることが出来るますが、容易に硬化しません。
中近東からエジプト、ヨーロッパへと文明が西に進み、中世社会がまとまった12世紀にヨーロッパでは、教会建築や王侯貴族の館などに豪華な石膏の装飾が施されるようになりました。特にフランスでは、石膏プラスターが使用されるようになりました。中でも、イギリス国王ヘンリー三世は、ウエストミンスター寺院の造営のために、フランスのパリから取り寄せた焼き石膏の美しい仕上げに感嘆し、これに「プラスター・オブ・パリス」という称号を贈り、以後、焼き石膏の一般名として、今日でも世界に通じる名称となっています。
その後、大都市では火災で石膏プラスターの防火的価値が認識され、さらに、石膏プラスターの使用が各地で広まることになります。パリ近郊のモンマルトルには石膏の大鉱床があり、ここで産出する高品質の焼き石膏は、ヨーロッパ各国に輸出されました。このモンマルトルの丘にある「ムーランルージュ(赤い風車)」は当初、製粉に使用されていましたが、その後、石膏の粉砕に使用されていて、現在でもその名をとどめています。
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