建築後、40年近くになる建物の石張り調の吹付け材料が剥離・剥落を発生しています。オーナー様は、建物の美的状況やこれが地震等で落下した場合に大きな事故につながることを苦慮していました。

このような仕上げ材料が剥離・剥落している原因と、どこから発生しているかで、工事費が大きく異なってきますので、事前の調査はとても大事なことです。

調査にお伺したところ、原因とされるところは、雨水の外壁面への侵入であることがわかりました。本来屋上の防水シートを留め付けるアンクル金具が存在せず、防水シートの小口が露出していました。アルミアングル笠木が設置されていても出幅が不十分であるため、笠木裏への吹上げ雨水が壁面内部に伝わっていたことが判明しました。

雨水は下地モルタル層に伝わっていきます。伝わった雨水は、晴天になると蒸発してなくなりますが、ここでの仕上げ材料は石張り調であるので固くて、容易に雨水を蒸発させてくれません。しかし、蒸発する力は強く、仕上げ材料の弱いとこにひび割れを発生させ、蒸発します。この状況が長年続きますと弾性力に乏しい吹付け材料は、外側にどんどんと剥離を進行させます。そして、付着力を失った仕上げ材料は、地震や風等の外力によって、力尽き剥落となります。これらの一連の状況を、難しい用語で乾湿挙動(モイスチャームーブムメント)といいます。

幸い、剥離の箇所が下地モルタルと仕上げ面の層でした。これがコンクリートと下地モルタル層ですと、モルタル層の改修工事となり費用が2~3倍に膨れ上がります。

1.吹付け基材の膨れ。

1.吹付け基材の膨れ。

さて、それでは、改修工事の工程ですが、のちのち再度のひび割れ、剥離の発生がないことを絶えず念頭におき、施工仕様を決めます。施主との決定事項は、既存石張り調の吹付けテクスチャーは維持することと、工事費の軽減を計るため化粧目地は設置しないことです。

まずは、剥離・浮き部分の撤去を行います。撤去は手はつりとタイルのはつりに使用する圧縮空気によるはつりです。

2.はつり機の跡が残るモルタル下地。

2.はつり機の跡が残るモルタル下地。

はつりが終了したら、剥離の原因となる雨水侵入を防ぎます。剥離した部分には、モルタル部分にひび割れがあり、このひび割れに伝わり雨水が侵入してきます。雨水の侵入の防止は、シールとセメント系のモルタル防水で行います。

3.ひび割れがあるモルタル下地。防水処理が必要。

3.ひび割れがあるモルタル下地。防水処理が必要。

4.モルタル防水処理の状況。モルタル防水の材料はポリマーセメント系塗膜防水材で、エチレン酢酸ビニル合成樹脂エマルジョンと、これを凝固させる無機質粉体からなる硬化材からなるものです。

4.モルタル防水処理の状況。モルタル防水の材料はポリマーセメント系塗膜防水材で、エチレン酢酸ビニル合成樹脂エマルジョンと、これを凝固させる無機質粉体からなる硬化材からなるものです。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

はつった部分と健全部では、当然段差が発生します。それを解消するために、当社のアツモルを塗り付けて、表層部にガラスメッシュを伏せ込みひび割れ防止を図ります。さらに30㌢間隔にエポキシ樹脂とステンレスピンを挿入して、ガラスネット、アツモル、躯体コンクリートを接合してモルタルの剥離を防止します。既存の健全部も同じようにエポキシ樹脂とステンレスピンを挿入して補強に努めています。

5.アツモルの塗り付け状態。

5.アツモルの塗り付け状態。

6.ステンレスピンを30㌢間隔に挿入した状態。

6.ステンレスピンを30㌢間隔に挿入した状態。

 

 

 

 

 

 

下地を完全にすることが、外壁リフォームの基本です。これを怠ると単なる美装で終わって、耐久性がなく、経年年数も少なくなって再度のリフォームをしなくてはならない状況となります。

7.補強が終了した剥落部分。

7.補強が終了した剥落部分。

専用のプライマーを塗布して、自然石調仕上塗材の吹付け材料を使用して仕上げに移ります。自然石調仕上材料は、他の吹付け材料に比較して比重が大きく、吹付け器械は、エンジンタイプのものを使用します。仕上げのトップ材料は、防藻対策用を使用して汚れから身を守るようにしてあります。

8.自然石調仕上材料の吹付け作業。

8.自然石調仕上材料の吹付け作業。

9.仕上げのトップ材料の塗布。

8.自然石調仕上材料の吹付け作業。

 

 

 

 

 

 

窓回りのシールの劣化がみられ、シールの打ち替えをします。

10.足場のあるうちにシールの打ち替え。

10.足場のあるうちにシールの打ち替え。