左官一服噺  道具○鏝の柄と鏝の素材(Trowel handle and iron materials)105

鏝の柄とは、鏝を握る部分のことで、このハンドルによって鏝操作を決定付けます。関東では漆喰工事が多いため力の入り易い鷲掴みとなり、柄が卵形になります。関西地方は土物が多く親指を柄の上部に添えて握る持ち方になります。よって、鏝の上部は丸みがなく、平らにしてあります。

さらに、関東と関西では、断面形状が異なり、関東は鷲掴みし易い卵型で、関西では丸形と西京型とがあります。関東の卵型はわし掴みで力が入れ易く、多くの壁を塗るという作業に適しています。関西の西京型は親指押さえで繊細の技を生かすのに、適用しています。そのため柄と鏝刃の間の柄首という部分は、関東の方が長くなり27㎜(9分)程度,関西では26㎜(8分5厘)程度とされています。

 鏝の柄の材質は、木目が細かく、吸水性のないものが良とされ、檜材(尾州檜、吉野檜、米檜)が多く使用されています。しかし、レンガ鏝は、洋鏝であるため、広葉樹の硬木を使用します。我が国の鏝は、柄の素材にもこだわりもっています。

では、鏝の素材は、というと、軟鋼や鋼(スチール)を使用します。木鏝は檜材で製作されます。鏝の錆びによって仕上げ面にも錆を呼ぶために、ステンレス材も鏝には使用されます。鏝は一般的には軟らかい地金(軟鋼)と、焼きを入れた硬い鋼製のものが一般的であますが、地金製のものは、土壁の下塗りおよび中塗りに使用されます。鋼製は、硬い素材であるため仕上げ用に使用されます。

下塗りに使用される地金製の鏝は、鉄板を使用し焼き入れしません。そのため壁材料の付着力が良いので、その付着力を利用して壁材料の塗り伸ばしや斑直しが可能となります。仕上げに使用される硬い鋼製の鏝は、壁材料の付着力が少ないため、平滑な壁面を締める、押さえる、磨くなどがいった作業に適します。

 昔から先輩諸氏の教えのなかで「甘い鏝は、鏝付きは良いが、辛い鏝は鏝離れが良い。」すなわち「塗り付け、塗伸ばしなら甘い鏝がよく、押さえる、磨くには辛い鏝がよい」と言われてきました。そして、粘りの少ない塗材を塗るのには、現在はあまり使用されませんが、モルタルのむら直しの塗り付けには、甘い鏝、特に多少すり減った木鏝が最良とされてきました。よって、適度のすり減った木鏝は、大事に使用していました。昔話です。

杉並の左官です。塗り替え、リフォームお待ちしています。電話03-3398-4335    http://s-kent.jp/contact/

 

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